あなたの犬と、1日20分の時間を作ってあげて下さい。
この基本のしつけの目標は、あなたの犬が喜んであなたの命令に従って落ち着いて自分の場所にじっとしていることができるようになることです。
これは、全ての問題行動を治療する上で大変重要なことです。ぜひあなたの犬と一緒にがんばってみて下さい。
あなたの犬が成犬でも構いません。
必ずできるということを飼い主のあなたが信じ、根気よく続けることが大事です。
ご褒美
ここでは犬に楽しい思いをさせてコマンドに従うことを学ばせます。
一回に与える量はごく少量ですので、ちぎりやすいハムやチーズ、ジャーキー、無添加おやつのフルータブルなどが与えやすいでしょう。
あなたにとっては一かけらの肉でも、犬にとってはステーキ並みの大きさです。
肥満にもつながりますので、与える量には十分注意して下さい。
たとえ大きな犬であっても、与える大きさはあなたの親指の半分の大きさで十分です。
今後はこの練習のときだけにこのおやつを与えるようにして、ときどきおやつの種類や味をかえてあげるといいでしょう。
また、ここで与えた分量のおやつぶんを差し引いた食餌の量を与えると、肥満のリスクが減ります。
コマンド
ここでは、「おいで」「お座り」「待て」「伏せ」というコマンドを使います。
あなたの犬がまだどれもできない状態であれば、まず「お座り」からはじめてみましょう。
ここでは、「お座り」や「伏せ」のコマンドに忠実に従うことが目的ではないので、あなたの犬が「お座り」のコマンドに対して「伏せ」をしても構いません。
あなたのコマンドに従うという犬の気持ちが大事なのです。
実施する時間
最低でも1日2回、朝晩10分ずつ練習しましょう。
実施する時刻は飼い主に合わせて構いませんが、できればおなかの空いている食餌前が効果的です。
練習方法
まずご褒美となるおやつを小さくちぎって、片手に15個ほど持ちます。
片手で持ちきれない場合は、おやつが大きすぎると思って下さい。
落ち着いてくつろいでいる状態のあなたの犬の名前を1度だけ呼びます。
おやつのにおいをかぎつけたあなたの犬は、喜んで飛んできます。
そこで、あなたはおやつを持った手を後ろに回して隠した上で「お座り」とコマンドを出します。
あなたの犬がコマンドに従えば、「よい子だね」などと褒めながら直ちにおやつを1つだけ与えます。
もし、あなたの犬が「お座り」というコマンドを知っているのに従わなかったり、興奮しすぎて収拾がつかなくなった場合にはこの練習は直ちに終了します。
そして、このあと犬がどんなにおやつを欲しがっても、30分ほど無視をして下さい。
30分ほどして犬が落ち着いたらまた練習を再開して下さい。
何回か練習をしていくうちに、あなたの犬は落ち着いてお座りをすれば、おやつがもらえることを学ぶはずです。
練習する際は、あなたが犬のすぐ前に経つようにしてください。
最初のうちは、あなたが犬と対面するよう移動して下さい。
また、練習の際は撫でてあげたり、余計な言葉を掛けたりしないでください。
練習は、かならず床の上でして下さい。
ソファやベッドといった、あなたの犬のお気に入りの場所での練習は好ましくありません。
犬に命令すると思ってはいけません。
命令口調できつくコマンドを出すと、犬は緊張してしまうでしょう。
この練習の目的は、犬を落ち着かせることにあります。
話しかけるようにゆっくりとやさしい声でコマンドを出しましょう。
また、発音や言い方(語尾をのばしたり延ばさなかったり、など)を変えずに、いつも同じ言い方・発音を心がけて下さい。
くれぐれもコマンドよりもおやつを先に与えないで下さい。
おやつを先に与えてしまうと、犬は動かなくなってしまいます。
「お座り」ができたら、次は「伏せ」をさせてみてください。
うまくできたらまたご褒美を与えます。
あなたの犬が「お座り」と「伏せ」の区別ができないのならば、それでも構いません。
その場合は、場所を変えて「お座り」をさせてみてください。
続いて、「待て」のコマンドで、一歩後ろに下がってみて下さい。
あなたの犬が落ちついて待っていられれば戻ってまたご褒美をあげます。
犬がついてきてしまったら、また「お座り」を命じます。
こうして何かを命じて犬がそれに従った場合は、常になにかご褒美を与えて下さい。
最初のうちはここまでの練習を何度か繰り返し、練習を終えて下さい。
練習の終わりには、なにか必ずうまく出来るコマンドを出し、犬もあなたも楽しい気持ちで練習を終えて下さい。
最後には「終わり」といいながら手を軽くたたいて犬を開放し、思う存分なでてかわいがってあげてください。
ここまでのことが簡単にできるようになったら、与えるコマンドを難しくしていって下さい。
「待て」をさせてあなたが隣の部屋に行って5分経っても「お座り」をしていることができるならば完璧です。
犬が興奮しやすい、屋外などでもやってみましょう。
最初のうちは、うまくいったら必ずごほうびをあげなければいけませんが、簡単にできるようになってきたらご褒美をあげる回数を減らしていきましょう。
いつご褒美をもらえるかわからない状態のほうが、学んだことを忘れないものなのです。
注意すること
くれぐれも、あなたの犬がうまくできないからといって、叱ってはいけません。
楽しいはずの練習の時間が憂鬱な時間になってしまいます。
大切なのは、あなたの犬が喜んであなたのコマンドに従うことなのです。
練習する際は、必ず途中に簡単なコマンドを織り交ぜてあなたの犬を励ましてあげて下さい。
この練習が、あなたの犬と、周囲の人間たちとのよりよい関係を築きます。